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2021-04-22

数々の有名人・著名人のウェディングを担当する、ウェディング業界大手T&Gグループオートクチュールデザインに所属している野上ゆう子さん。
出産されたばかりでもご主人やチームメンバーの助けを借りながら、ウェディングデザイナーとしてトップを走り続け、2019年にはウェディング業界のオスカーと言われる '' ELLE インターナショナルブライダルアワード '' にアジア初の女性としてノミネートされ、ドレスのバイイングやプロデュースなど活躍の幅は多岐に渡る。

結婚・出産を機に仕事を辞めたり、時短で働く女性が多い中、出産前よりさらに活動の幅を広げていっている理由とは?

出産や育児をしながらも、今尚さらに進化し続け、輝き続ける女性たちにインタビューをしていく、W habitの『輝く女性からのメッセージ』

記念すべき第1回は、ウェディング業界でトップデザイナーとして走り続ける野上ゆう子さん。

 

 

ウェディングデザイナーとして今年で18年目。
一ウエディングプランナーとしてデビューの後、4年で社のトップファーストプランナーになると、新しく立ち上がった『オートクチュールデザイン』のウエディングデザイナーに抜擢、さらには2014年、表参道に第1号店をオープンさせた『Mirror Mirror(ミラーミラー)』のプロデュース、ドレスのバイヤー、そしてさらにはオリジナルのドレスの制作にも携わる。
数多くの有名人・芸能人の結婚式をプロデュースしており、一般の方からの依頼も止まらない野上さんに、表参道のドレスショップMirror Mirror にてインタビューさせていただきました。

 

 

どうやって今の仕事にたどり着いたのですか?

野上:実は最初から『ウエディングプランナーになりたい!』と思っていたわけではなかったんです。

 

学生時代の自分の経験から何かを企画する仕事に就きたいと思っていて、企画したり、運営することが好きだったし、楽しかったので、そういう体験をもとに仕事に結びつけた方がいいのかな、と思って。

 

その時にパッと思いついたのが、広告代理店だったので、面接を受けたりしていました。

 

 

ですがある日、広告代理店で働いている方からこんなことを聞いたんです。

 

『大手は女性だと最低でも10年の下積み時代を経験してようやく一人前として花が咲くんだ』

 

ということを。

 

当時の私は、22歳で大学を卒業して10年経った頃にはもう結婚して子供もいて、きっと仕事から離れている年齢に達しているな、と想像していたので、改めて自分の仕事の方向性を考えた時に、他の業界にも目を向けてみよう、と思いました。

 

 

インタビューワー中村(以下、中村):ではその時感じたことがきっかけで・・・

 

 

野上:はい、そうですね、正直なところ、よりもっと男女問わず、活躍できる場で私自身も勝負してみたかったので。

 

その時に友達と就活についての情報交換をしている中で彼女が教えてくれたんです。
『ウエディングプランナーっていう仕事がある』ということを。

 

それをきっかけにその当時まだよく知らなかった『ウエディングプランナー』について調べれば調べるほど、企画も運営もできる、そしてさらには女性が人生で一番輝く日である、最良の日を迎えるところに立ち会うウエディングプランナーはまさに私のやりたかったことだ!と、ウエディングプランナーを目指すことにしたのです。

 

 

中村:今でこそ仕事内容は多岐にわたっていると思いますが、当時はウエディングプランナーからスタートされたのですね。

 

 

野上:そうです、もうウエディングプランナーは今年で18年目です。

 

 

中村:当時は一般の方をメインに担当されていたと思いますが、今では芸能人ウェディングをプロデュースする業界でもトップのプロデュースチーム、オートクチュールデザインのトップデザイナーになり、かつドレスのバイイングやオリジナルドレス制作もされていたりしますが、移行のきっかけは何だったのでしょうか?

 

 

野上:22歳で大学を卒業し、今の会社に就職してガムシャラに頑張ってきました。幸いなことに、T & G グループは階級制度が明確で、自分が今どのポジションにいるのか、どこを目指したいのか、がとってもわかりやすいんです。

 

どうせ目指すなら1番を目指したい、という気持ちがあったのですが、その階級制度の中に『ファーストウエディングプランナー』という称号があり、600名くらい(当時)いる中で約4年でその称号を手にすることができました。

 

ですが、やりながら自分で描いていた『自由に創造する』『作り上げる』『クリエイティブする』『企画する』ということと、何か違っている感じがしたんです。

 

結婚式を経験された方であればわかっていただけると思いますが、招待状を選ぶのも、ゲストに出すお料理も、ある程度の設定があり、その中から選んでいただく。

 

本当にそういう小さいことからなのですが違和感を感じることがあったり、社員の評価のされ方も「バランスがいい」「売り上げがいい」などの基準で評価されたりするんですよね。会社なので、それは当たり前と言えば当たり前なのですが、もっといい方法があるんじゃないか?もっとできることがあるんじゃないか?と考え続けていた中で、29歳の時に転機が起こります。

 

 

中村:それは何だったのですか?

 

 

まだ見ぬウエディングの可能性に出会い、世界が一変

野上:ある意味やりきった、トップの称号も得た、そしたらもうこの業界でできることは全てやったのではないか?とも思うのと同時に、私自身も結婚や出産のことを改めて考えたりして(そういう時期ですよね?)。

 

それで実は『退職届』を出したんです。

 

 

中村:え!?出したんですか?

 

 

野上:出しました。その時の面談で、働き方を変えたいのなら部署異動も考えてみたら?という提案をもらったのですが、私の中ではやりたい分野でもなかったのできっぱりと『退職します』とお伝えしたんですよね。

 

では具体的に次どうする?いつ退職?などのことも含めて人事の方と話す予定だったのですが、ちょうどその時、私は白金の会場勤務で梨花さんのウエディングを見たんです。

 

 

中村:私、梨花さん大好きなので、知ってます、あの会場で手伝われていたのですね。

 

 

野上:そうなんです。会場で梨花さんのウエディングのヘルプをたまたまさせてもらった時に見た式が、今まで私がやってきたものと全然違ったんです。ある意味、衝撃を受けたんです。

 

床は全てピンクになっているし、飾り付けも、招待状も・・・
え!?なんなの、このウエディングは・・・!

 

梨花さんのウエディングって・・・こんなにも違うの?と思った時に、私が今までやりきった、プランナーとして目指すところがないな、と思っていた自分の見ている世界の幅の小ささに気づいたんです。こういう世界があったことを知らなかったし、こんなとこもできるんだ、というウエディングの希望に出会ってしまって。

 

私がやりきった、と思ったことってなんだったんだろう?
今まで私がやってきたウエディングってなんだったんだろう?

 

と感じたのと同時に、私の中にまたワクワクした、キラキラした気持ちが湧き出てきて。

 

そして人事部長との面談の時に、言われたんです。

 

『梨花さんを筆頭に有名人、芸能人の方からの依頼も来ることが想定されるので、少ない人数でマンパワーで行うのではなく、その分野をきちんと組織にしたい。

 

それであれば、あなたの成長を感じられる部署の異動というのが叶うのではないか?』

 

と提案された時に、もうやる!となったんです。

 

 

中村:では、退職は撤回ということですね?

 

 

野上:はい、そうです。それで、当時まだオートクチュールデザイン、と名前のついていなかった部署に異動することになりました。色々なタイミングが重なっての出来事だったので、その時から強く『人生はタイミングだ』と思うようになりました。

 

そして名前も現在のオートクチュールデザインになり、有名人、芸能人だけでなく一般の方でも理想の結婚式を挙げたいと思う方のプロデュースをしていくことになるんです。

 

 

子供がいても、チームメンバーに支えられて仕事ができる

中村:今では結婚も出産も経験されて、お仕事に復帰されていますが、結婚、出産を経て大変だったこと、又は大変と思っていたけど案外大丈夫だった、ということはありますか?

 

 

野上:ちょうど32歳で結婚した時に、このミラーミラーを(インタビュー会場)オープンさせるメンバーに抜擢されたところだったんです。私も仕事を頑張りたかったので、年齢のこともあり出産も考えていたのですが、せっかくやるなら頑張りたい、3年頑張ったとして35歳から妊活を始めても遅くないかもと思い、この仕事に全力を注ぎました。

 

旦那さんとの関係も、お互いの仕事を尊重するパートナーという感覚で、私のやりたいことを応援してくれている、そして何も言わないけど影では支えてくれているという安心感があり、この仕事に全力を注ぐことができたんです。彼と結婚できたから、私はここまで羽ばたけたんだ、と思いますね。

 

旦那さんも応援してくれていたので、出産前は24時間、私は自分の仕事に力を注げたんです。ですが子供が生まれた後は、2/3が子供中心の生活、1/3が自分の時間(仕事を含め)になるんですよね。

 

仕事に対しての気持ちは前と変わらなくても、時間の使い方が変わりました。
夜の会食も以前のようには行けないこともありますし、お客様からの打ち合わせの希望時間が夜になると、やっぱり『子供どうしよう』となります。

 

お客様や関わってくれるメンバーたちとどうする?どう伝える?というのは、やはりもどかしいものはあります。

 

 

中村:そうですよね、私も娘がいますが、スケジュールの組み方は一番考えるところです。

 

 

野上:今ではチームメンバーにもたくさん頼っていて、そうなるとやっぱり『一人ではできないんだ』という気持ちが強くなります。

 

私がこういう状態になることで、チームメンバーも更に輝くことができる。野上さんがいなくても、私たちにもできることもたくさんある!と、チーム自体もより筋肉質になっていっている気がしますね。

 

チーム力も高まるし、それぞれのポテンシャルも高まる。そして私もチームメンバーに任せることができるようになっていて、何よりチームへの感謝を伝える努力もできる。出産をきっかけに、今のチームを作るのにすごく良かった、と思う部分も強いです。

 

 

中村:今感じたことをちょっと聞いてみてもいいですか?私自身、女性と関わる機会がものすごく多いのですが、接してきた約8割の女性が『自分に自信がない』『自分には価値がない』と思っている人が実は多いのですが・・・野上さんのお話を聞いていると、野上さん自身に全くそれを感じないのですが・・・(笑)

 

 

野上:ないですね!(笑)

 

 

中村:それは昔からそうですか?

 

 

野上:だと思います。自分の親の教育もあるとは思いますが・・・

 

 

中村:一緒に働くメンバーのみなさんはどうですか?

 

自信はつけて行くもの。最初から自信のある人なんていない

野上:そうですね、やっぱりまだまだ自己肯定感が低い子は多いと思います。ですが、私が親からそういう教育を受けてきたように、育て方次第でどうにでもなる、と思っている部分はあります。

 

最初から自信はなくても、本当に小さな『できた』から自信はついて行きますし、その積み重ねでより強固な自信につながっていくと思うんです。

 

一緒に関わることで色々教えられることもたくさんあって、なんと彼女たちは今、自分に自信があるんです。失敗も恐れない。何かあったら野上さんがなんとかしてくれる!という安心感もあるんだと思います。

 

これが上に立つ人の役目かな、と思います。それぞれの個性を活かしてあげる、価値を引き出してあげる。

 

 

中村:環境も大事ですね。野上さんのような上司のいる元で働くことによって自信をつけていくこともできますが、自分自身を磨くことで自信が持てるような行動ができれば、自信を持てるようになって行きますよね?

 

 

野上:そうなんです。だから私はこのミラーミラーを立ち上げた時、コンセプトを『鏡に映る自分を愛せるように』としたのも、それが理由です。女性が自分自身に本当に自信を持ったら、容姿とかの部分だけじゃなくて。

 

今の私がもうちょっと頑張ったら美しくなるんだ、そしてその美しくなった自分を見て自信になる。そういうちょっとしたきっかけにこのお店がなればいいな、と思ってこのコンセプトにしましたし、お店にたくさん鏡をつけたのもそれが理由だったりします。

 

 

中村:ミラーミラーという名前も、コンセプトも、野上さんのアイディアですか?

 

 

野上:そうです!

 

 

中村:うわ〜、とっても素敵です・・・!

 

 

野上:自分に自信が持てれば美しくなれる。それは外見だけの話ではなく、結局外見の美しさも内面からきますから。
なので自信をつける『how to』をここで学ぼう、というお店にしたかった。

 

それはこのドレスショップのスタッフたちにも常に伝えているところです。
『あの店員さんから買いたい!あの店員さん綺麗だし、きっと私のこともわかってくれる!』という経験をスタッフ自身が経験すると、みんな自信を持って羽ばたけると思いますし、そういう人たちが集まる場所でもあってほしい、と思っています。

 

 

中村:自信がないと言っているスタッフでも自信をつけてもらう、自分もできるんだ!という状態になれる自分がそもそも『価値』ですよね?

 

 

野上:そうです。それは私野上ゆう子と比べる、とかではなく、自分自身で自分の価値を認められるということが重要です。

 

 

中村:私も今回このコミュニティ型ポータルサイトを立ち上げた理由も野上さんがおっしゃっていることと似ていて、このサイトがミラーミラーのように、じゃないですけど、そういう場所であってほしいと思っているんです。

 

私が出会った女性の中には、
『今まで家事しかしてこなかったんです』
『育児にしか専念してこなかったので・・・』

 

という方もたくさんいますが、それ自身が価値ですよね?世の中にはベビーシッターという職業もありますし、家事代行、家政婦、などという職業もあります。

 

女性が『それだけ』しかやってこなかった、という『それ』にはもうすでに十分価値があるんですよね。

 

このサイトを見てくれる人たちは、そこに向けて一歩を踏み出した人たち、もしくはこれから踏み出そうとしている人たちなのですが、彼女たちに一言、メッセージをいただけますか?

 

最短距離だけを求めない。ホンモノになるための自分を磨く時間を作ろう

野上:新しい一歩を踏み出す、環境を変える、タイミングがある、ということは、私も常々スタッフやチームメンバーに伝えていることでもあるんです。

 

だからと言ってすぐにそれをやらなければいけないわけではありません。でも、それまで積み重ねてきたことがあるからこそ、積み重ねてきたものをどういう風に価値として可視化させていくのか?ということは経験してきた何かがないと、難しいと思うんです。

 

今はこれだけ情報も溢れているし、ものも溢れている、そして個人で活躍する人も溢れている中で、ホンモノでないと生き残れない気がしていて。

 

なので、ホンモノになるための『磨く時間』というのは、絶対に必要だと思っています。

 

結構、その目標を達成するために、とか、自分を磨くためにも『最短距離』を探そうとする人が多いのですが、それはとっても危険なことで、短命を作ると思っています。

 

でもそこで百戦錬磨することで、自分自身で解決できるアイディアがたくさん出てくる、それは経験でしかわからないと思うんです。その経験が『ちょっとした経験』では見落としてしまうことがたくさんあると思っています。

 

常に『最短距離』だけが良いわけではないです。その積み重ねを無駄と思わないで、ということは私が常に伝えていることでもありますね。

 

それと反するかもしれませんが、常にチャレンジ精神も持っておいて欲しいですし、こんな風になりたい!という気持ちがないと、その後の行動に繋がらない。

 

だからたくさんチャレンジして、たとえ失敗したとしてもそれが糧になるので、どんどんチャレンジして欲しいです。そしてそれを発信して欲しいです。そうすることで、嘘みたいな本当の話で自分の理想を引き寄せられたりするんです。

 

 

中村:今の日本の社会構造的に、まだまだやっぱり女性は家事育児、男性は働く、というようなイメージを持っている方も多いと思いますが、決してそうでなければいけないわけではないですし、女性も本当に価値がある、と私は思っています。活躍できる要素はたくさんありますよね?

 

 

野上:女性って、ある意味マジメですから。そして女性は割と『私はこうしたい!』の信念を持っているんですよ。

 

女性ってそれこそ仕事に加えて家事育児、などやることが多いので、遠くのゴールを見て逆算することが多いと思うんです。

 

それは意外と仕事に活きているんですよ。普段から、何時に帰って、ご飯作って、何時に子供を寝かせて・・・ということを考えながら動いている人が多いと思いますから、そういった意味では中長期のことを考えるのは、女性の方が得意なのかも?と思うことは多々あります。

 

 

大丈夫、自信は必ず後からついてきます!

 

 

中村:ありがとうございます。今回野上さんのお話を聞いて、たくさんの方が一歩を踏み出すきっかけになると思っています。今日はたくさんのお話を聞かせてくれてありがとうございました!

 

 

 

 

オートクチュールデザインHPはこちら

野上ゆう子さんインスタグラムは@yuko33nogami

ドレスショップ Mirror Mirror HPはこちら

ウェディングデザイナー

野上ゆう子

1981年4月生まれ、青森県出身。
大学在学中にウェディングプランナーの仕事に興味を持ち、T&Gグループに就職。
多くの有名人・著名人のウェディングをプロデュースする傍ら、ウェディングドレスのバイイングや制作も行う。
2019年にウェディング業界のオスカーと言われる'' ELLE インターナショナルブライダルアワード ''にアジア人初のプランナーとしてノミネート。
プライベートでは夫と息子の3人暮らし。

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