2024-01-29
こんにちは。アダムス睦子です。
いままで皆さんに、「子どもやパートナーとの時間管理にまつわるコミュニケーション」の一助としてひとつのメニューを基にお話したり、様々な角度から「時間管理」についてお伝えしてきました。
今回も、23年間職業として携わってきた私の専門分野である「食」とからめてお話をしていきますが、今日は、この年末年始のとある出来事と気づきをもとに、独自の視点をさらに交えたちょっとマニアックなお話をしていきたいと思います。
今日のお話しは「カニ風味かまぼこの社会貢献」のお話です。ぜひ、肩の力を抜いて、読んでみてください。
カニ風味かまぼこ研究家として
もう2024年の1月も終わりに近づいてきましたね。
約1ヵ月前のこの年末年始は、皆さんは何をして過ごされたでしょうか。私は、師走も押し詰まり始めた時期に、入団している地元合唱団の音楽仲間の先輩のお宅に伺う機会がありました。そこにご参集された皆さんから、たまたま、日本橋のとある「練り物屋さん」のお話を耳にしたのです。
「寒い時期にはおでんがおいしい、そしておでんの良し悪しの決め手になるのは間違いなく練り物の質である、それにはこのお店の練り物が一番だ!」・・という話の流れでした。
私はよく子どもたちと、「死ぬ前に1品食べるとしたら、何が食べたいか」という会話をするのですが、私の回答は毎度迷いがなく、今際の際に食したいものは「カニ風味かまぼこ」と答えるのです。しかしながら23年間食品業界に身を置いているにもかかわらず、残念なことに「カニ風味かまぼこ」が今まで携わる事業領域になったことはありませんでした。
世の中に「カニ風味かまぼこ研究家」という肩書があるのならば、それはまさしく私のことだと思うのです。
先輩のお宅で聞いたこの情報は、練り物という広義なカテゴリーが対象ではありますが、カニ風味かまぼこ研究家としては無視できない情報です。ですから当然、年末に日本橋のそのお店に前のめりで乗り込み、カニ風味かまぼこの仲間である練り物たちを、喜々として入手してきたのです。
カニ風味かまぼこの偉大さ
専門的な食品の話をすると、「カニ風味かまぼこ」は、「コピー食品」というグループに入ります。
「カニ風味かまぼこ」は甲殻類の総称である「蟹」が原材料に入っておらず、かまぼこやちくわと同じく練り物の原材料でできた加工食品のことで、ある食材を使って、別の食材に似せた「コピー食品」というグループの代表格なのです。
一昔前、なかなか手に入らなかったものを何とか似せて楽しみたいという熱い思いと、食感や風味を似せる技術とこだわりが生んだ「コピー食品」は、他にもバターの代わりに「マーガリン」というものがあったり、「いくら」のコピー食品をご存じの方も多いことでしょう。
以前、子どもたちと家族旅行に温泉に行ったとき、旅館で「蟹」が提供されました。かまぼこではない、海にいる甲殻類の本物の蟹です。子どもたちは「ママ、これカニ風味かまぼこの味がするよ!カニ風味かまぼこに似ていて、おいしいよ!」と言ったのです。恥ずかしいかな「お里が知れる」とは、まさにこのことでしょう。
しかし「蟹」と「カニ風味かまぼこ」がそこまで完コピされ、どっちが元祖でどっちが後発なのかわからないという証拠でもあると思うのです。
今ここで蟹を食べれば幸せな気持ちになれるだろうが、手が出ない価格や、今日明日で入手しにくい地理的事情などが目の前に立ちはだかったとき、蟹の代わりに頂くことで、いとも簡単に幸せな気持ちを手にできるのが「カニ風味かまぼこ」というポジションだと、私は理解しています。
まるで正義のヒーローよろしく、蟹が無くて困っている人の前にサッと登場し、時間や空間を超えて人を幸せにできるという意味では、カニ風味かまぼこは壮大な社会貢献をしていると思うのです。
日本で開発され創られた「カニ風味かまぼこ」。私は「カニ風味かまぼこ」を開発した方々に、心から尊敬と感謝の気持ちを持っています。
美味しいものとは何か。美味しいものの何が人を幸せにするのか。
話を戻しましょう。先輩宅で情報を得た、日本橋で購入した練り物たちですが、これが途轍もない代物でした。そのひとつに「手取り半ぺん」という名前のアイテムが在りました。
一枚一枚、手作業で四角い木枠に手作業で型取りしているそうで、パッケージには威風堂々と元禄元年という文字が浮かびます。奇しくも今年と同じ辰年だった元禄元年。そこから約300年以上、変わらない伝統製法を守られて製造されているわけです。
もちろん300年前の実物との味の比較検証はできません。しかし忠臣蔵の時代に、もしかしたらその関係者もこれらの練り物を食しながら、討ち入りの日を待ち続けたかもしれないと思うと、大いなる歴史のロマンと、そこに平行して横たわる「美味しい食べ物」を造り続ける人の情熱に、胸が熱くなるのです。
この年末年始、自宅の引越しをしていた私は、師走の慌ただしいときに輪をかけて忙しくしていました。そんな枯れ枝のようにガサガサした日々の中、幸せの光をポッと心の奥に灯してくれるようなしみじみした味わいで、常温に戻しても生臭くなることも一切なく、カニ風味かまぼこの開発者たちと同様、そこにある一切の妥協をしないこだわりを感じ、この手取り半ぺんや他の練り物たちを一通り頂き、私は一瞬で自分の幸せな感覚を取り戻したのです。
美味しいものとは主観でしか測れませんが、美味しいものの中に在る「作り手の情熱」が、人を瞬間的に幸せにするのだと私は改めて思いました。
誰もが、仕事や家庭内での大量のタスクを前に「時間管理」とその遂行に集中しているとき、おそらく脳内スキャンはフル回転に違いないのですが、「作り手の情熱を感じられる食べ物」に出会った瞬間、脳内は止まり、誰もが自動的に味覚や嗅覚などの五感に集中していると思います。
人生の中で食べられる食数は決まっているのだから、1食たりとも妥協せず、原料もこだわりがあって美味しく高級で珍味なものをとことん探して口に運べと言っているのではありません。自分が真に作り手の情熱を感じ、それによっておいしいと思うのなら、それはどんなアイテムでもよいと思うのです。
嗜好品の紅茶でもコーヒーでもお菓子でも。主食や主菜ではなく汁物でも、もちろんカニ風味かまぼこでも。
食を通じて幸せになるとは、ただの気分転換や味覚操作ではなく「そこから何を感じるか」であり、「効率的な時間に集中できる自分で在る」ための糧になるもの。そんな目線で、今目の前にあるすべての食べ物に集中してみても良いかもしれませんね。きっと時間を超えて一瞬で皆さんを幸せにしてくれるものが在ると思いますよ。
今回のコラムはいかがでしたでしょうか。最後までお読みいただきありがとうございます。それではみなさん、また次月に!
時間管理アドバイザー
アダムス睦子